1、オーディオの趣味

5)オーディオ実験室
b)、チャンネルディバイダの実験
b-2)、実用的なフィルタの設計(1)
ⅰ)はじめに
 此処ではTADのウーハTL1601bとTD4001ドライバを用いたスピーカシステム用として4次のLPF、HPFでアクティブフィルタ方式のチャンネルディバイダ、LCRでパッシブフィルタを用いたディバイディングネットワークを各々設計してみたいと思います。
 4次以上の高次のフィルタを使用してチャンネルディバイダを作る場合アクティブフィルタ方式を採る例が多い様ですが、これは周波数が変化するとスピーカのインピーダンスカーブが変化して抵抗の様に一定にならない為にフィルタの周波数特性が暴れて其の補正が結構難しい為、設計通りのフィルタ特性の実現するには高度な技術や経験が要求されるからだろうと思います。その点アクティブフィルタ方式ではスピーカの周波数が変化しても其のインピーダンスがフィルタのの特性に影響を与える事は有りませんので理想的な特性を実現し易くなります。
 使えるアンプの数に制限が無ければアクティブフィルタ+マルチアンプ方式が良いのでしょうが、アンプの試聴試験等で此のスピーカシステムを使いたい場合等ではマルチアンプと云う訳にもいかないでしょうからLCRを使ったパッシブフィルタも検討する事にしました。

ⅱ)4次パッシブバターワースフィルターの設計
 バターワースローパスフィルタの振幅特性は次式で定義されます。

   |T(jω)|=1/(1+(ω/ωc)^2n)^(1/2)-----(5b-21)
 
 ωcはカットオフ周波数を表します。この式から判る事はフィルタの次数に関係無くカットオフ周波数に於いて振幅特性は1/√2になるという事です。フィルタの伝達関数を求めるのは大変なので参考文献から結果だけを拝借しました。
 正規化された電圧伝達関数Tf(s)の根は原点中心半径1の左半円に存在し円周を2n等分した位置になります。
 
   Tfn(s)=1/(Π(i=1、n/2)(s+νni+jμni)・(s+νni-jμni))-----------(偶数)(5b-22)

   Tfn(s)=1/((s+ν(n+1)/2)Π(i=1、n/2)(s+νni+jμni)・(s+νni-jμni))----(奇数)(5b-23)

   μni=cos((2iー1)・π/2n)、νni=sin((2i-1)・π/2n(但しi=1、、、(n+1)/2(奇数)、

   i=1、、、n/2(偶数)


で与えられます。

 以下簡単に各次数の伝達関数を表して見ますと、正規化してj(ω/ωc)=sとおくと

    (1次LPF):Tf1(s)=1/(s+1)----------------------(5b-24)

    (2次LPF):Tf2(s)=1/(s^2+√2s+1)------------------(5b-25)

    (3次LPF):Tf3(s)=1/(s^3+2S^2+2s+1)---------------(5b-26)

    (4次LPF):Tf4(s)=1/(s^4+2.613s^3+3.414s^2+2.613s+1)----(5b-27)


 以下、略となります。此処では4次のフィルタを取り扱うので取り敢えず4次のフィルタまで書き出してみました。
 尚、フィルタの事を詳しく勉強したい方は、参考文献を参照してください。復習がてら『電気回路論』の教科書辺りから勉強し直した方が良いかも知れません。

 普通フィルタの設計では実用回路の実現がその目的ですから上に示した様な伝達関数が出てきても余り役には立ちません。欲しいのはL、C、Rの実際の値ですから。
 ここで基準ローパスフィルタの設計公式を示しておきます。之も先に挙げた参考文献から結果だけを拝借しています。

  左図(図5b-2A)に基準ローパスフィルタの0-R形式
 (入力インピーダンス=0、負荷インピーダンス=R)とし
 た時の回路図を示します。
  他にも回路の表現方式はR1-R2方式、R-∞方式
 等が有ります。普通我々が使うオーディオ回路では
 0-R方式が殆どだと思いますが必要ならば参考文献で
 各自勉強してみてください。
  (L、Cのサフィックスは回路図の右側から1、2、、、、、
 と付いていますので注意を要します。)


    L/R、またはC1・R=(β^(1/n)・sin(π/2n))/ω---------(5b-28)

    L
/Rk+1、またはC・Lk+1=(β^(2/n)・sin((2kー1)・π/2n)・sin((2k+1)・π/2n))

                         /(ωc^2・(cos(k/2n)・π)^2)-----(5b-29)


    β=(α^2-1)(但しαはカットオフ周波数に於ける振幅値でバターワース特性の場合、
       α=√2、β=1


    特性:y^2(x)=1+β^2・x^2n、x=ω/ω、β=(α^2-1)^(1/2)----(5b-2a)

 以上の計算公式を使って4次パッシブバターワースローパスフィルタを設計した結果を示します。
 ターゲットのフィルタスペックは、TAD製スピーカTD4001、TL1601bに合わせてカットオフ周波数fc=650Hz、遮断特性は-24dB/oct.としました。

  左図(図5b-2B)に4次バターワースローパスフィルタの回路図(上図)と SPICEによる動作特性のシミュレーション結果(下図)を示します。

 負荷抵抗にはスピーカの公称インピー ダンスに合わせてRL=8Ωの純抵抗にしてあります。
  結果を見るとfc=653HzでMag=-3.11dB、減衰特性が-24dB/oct.と概ね良好な特性が実現出来ました。
 Lの値も3.0mH、2.12mH、同様にCの値も48.3uF 、11.4uFと其程実現が難しい定数では有りません。
 
  処で、実際のスピーカ負荷では周波数が変化した時純抵抗の様にインピーダンスが一定ということは有りませんので次にスピーカのインピーダンス変動を考慮した時のフィルタの特性を検討してみたいと思います。







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