1、オーディオの趣味
5)オーディオ実験室 a)、フォノイコライザの実験 a-3)、NF型フォノイコライザの改良のページ(その2:同相誤差を取り除く。) ⅰ、概説 NF型イコライザは同相誤差の影響で、高域周波数でRIAA偏差が大きくなる事は、前項のa-2)で説明しましたが、録音側RIAA(逆RIAA)の伝達関数は、 T(rec)=K1・(ST1+1)・(ST3+1)/(ST2+1) (K1は利得係数) --① ですから、再生側RIAAの伝達関数は、 T(plb)=K2・(ST2+1)/{(ST1+1)・(ST3+1} (K2は利得係数) --② であれば、T(rec)・T(plb)=K1/K2 となって、伝達関数は実数となり、周波数偏差は生じませんが、a-1)で見てきた様に、正相アンプを使用する場合は、再生RIAAの伝達関数はイコライザ素子Zに織り込まれて、 A≒(Z+R5)/R5=Z/R5+1 --③ 但し、Z=R3/(SC1・R3+1)+R4/(SC2・R4+1) --④ となります。此処で、S→∞ の時、イコライザ素子のインピーダンスはZ→0ですが、イコライザアンプの利得はA→1 (≠0)となり、式②と比べると、誤差が生じる事が分かります。反転アンプを使用した時は、この様な誤差は生じませんので、同相誤差と呼ばれます。従って、反転アンプでフォノイコライザを構成すれば全く此の様な問題を生じませんが、イコライザを反転アンプで構成すると正相に戻す為に、もう一度反転アンプを通す必要が有り回路規模が大きくなったり、反転アンプの挿入場所に拠ってはS/N、ダイナミックレンジ等の別の問題が生じる事になります。此処では正相アンプでイコライザを構成した時の同相誤差を排除する方法を紹介します。 この回路図の内、左半分は普通のNF型RIAAイコライザアンプです。亦、右半分の内、R6~R、C3、C4で構成されるのはCR型RIAAイコライザ素子です。OP2はボルテージフォロアで負荷インピーダンスの影響を避ける為に挿入されています。 此処で伝達関数を計算するために、R3、R4、C1、C2で構成される回路をZと置きます。同様にR7、R8、C3、C4で構成される回路はRIAAイコライザ素子ですから、Z’=K・Z(KはZとのインピーダンス比(実数)をあらわす)と置きます。亦、R6はR5のK倍に設定します。伝達関数Tは T≒{(Z+R5)/R5}・{Z’/(Z’+R6)} --⑤ ={(Z+R5)/R5}・{k・Z’/(K・Z’+K・R5)} =Z/R5 --⑥ となり、理想的なRIAAの再生特性を実現する事が分かります。Z’は後ろにボルテージフォロアがバッファアンプとして入っていますのでNF型イコライザアンプの負荷が重くならない様にインピーダンスを高くする事が出来ます。此の様にしますと NE5534の様に利得3以上で使う様に推奨されているOPアンプを使う場合でも、OP1の出力からR4の間にシリーズに抵抗Rx=2・R5を入れてもR6で調整すればオーバーオールのイコライザの伝達関数には影響を与えませんので安定に回路を動作させる事が出来ます。
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